「熱湯」の看護師はすぐ辞め「水風呂」スタッフは
給料分の仕事しかしない「実践的看護師マネジメント 第7回」
質の高い「熱い看護師」は文字どおり”熱い人”
ここで言う「熱い看護師」とは、寝る間も惜しんで「いい看護をしよう、医療の質を高めよう」と頑張る 人で、リフレッシュ休暇も学会で消化するような勉強熱心な人のことです。
私もかつて看護師でしたが、いつも「患者さんのこと」を中心に考える仏様のような先輩が何人かいました。
私は今でも、コンサルティング先で肝入りの「熱き看護師」に出会い、エネルギーを貰っています。
経営学者の高橋信夫氏の研究によれば、倫理観が高く、現状に甘えず「もっとやなきゃ」と思う「熱い人」(情熱的な人)は、所属する組織の現状を「ぬるま湯」と感じているものだというのです。
図は、高橋伸夫氏の「ぬるま湯体質の研究ができるまで」という論文の湯かげん図というものです。
高橋氏は、組織の風土と個人の仕事への充実感を11問のアンケート調査の結果から「湯かげん図」(お風呂に入ったときの肌感覚)として説明しています。
高橋氏は、仕事に燃えて現状を打破し、業務改善していこうとする気持ちの強い「熱い人」とは「体温が高い人」のことで、図の縦軸では上の方に位置するとしています。
体温の高い人(熱い人)にとっては、それに見合った組織の温度(システム温)がないと、風呂の湯は「ぬるく」感じる。
逆に、体温が低い人(仕事に燃えておらず給料分しか働きたくないという冷たい人)が組織の温度も低い(組織の変化が少ない)風呂に浸かっていることを水風呂。
(F点)体温が低い人が組織温度(異動や昇進や新規プロジェクトが多く新人、中途採用もバンバン入ってくるなど変化性向大きい状態)が高い風呂に入っているのを 「熱湯」(B点)。
人の体温と組織の温度のどちらもが高いときは「適温」(I点)と表現しています。
高橋氏によると、「水風呂」ゾー ンにいる看護師は仕事をせず、「熱湯」にいる看護師はすぐ辞め、「適温」にいるスタッフはよい仕事をする(人も組織も変化性向が大きく、一体となって変化することを指向したゾーン)。
そして、熱い(情熱的な)看護師は仕事に燃えているので、組織を「ぬるま湯」と感じるため、その場合は組織温度を上げる(変化性向を高める)必要があると言います。
[caption id="attachment_72" align="aligncenter" width="300"] 出典: 高橋伸夫「ぬるま湯的体質の研究が出来るまで(叩かれることで目覚める)」『赤門マ ネジメント・レビュー』( NPO法人グローバルビジネスリサーチセンター)第2巻、第6号。
pp.247-278、2003年6月25日
http://www.gbrc.jp/journal/amr/open/dlranklog.cgi?dl=AMR2-6-2.pdf
( 2014 年 7月19日アクセス)[/caption]
「熱き看護師」のよい考えを「水風呂スタッフ」がつぶす
感染委員会に所属する熱い看護師が「最新の感染対策を取り入れよう」と言ったり、業務改善に燃えている看護師が「接遇改善のアンケートを取ろう」と言ったりすることを、水風呂に位置する冷たいスタッフは正直「うざい」と感じます。 水風呂スタッフは何も変えたくないので「今までどおり」を主 張します。 「これまでだってこのやり方で感染は起きてない。 なんで変えなきゃなんないの?」「アンケートなんて提案している人が勝手にとればいいでしょ」が、水風呂スタッフの本音です。 こうした水風呂スタッフの率が高い病棟では、「こんな忙しいのに何言ってんの」と、一瞬で熱き看護師の意見は叩き潰されます。 そして、熱き看護師は「本当の看護」ができそうな病院を求めて去っていくのです。 こうして「いい人が辞めていく現象」は起こります。 ここで、「忙しいけど患者さんのげる(改善する、アンケートを取る)と熱い看護師は満足(適温に感じる)し、よい組織がつくれます。 さまざまな改善をすると、変化を嫌がる水風呂スタッフは最初のうちは辞めていきます。 しかし、水風呂スタッフが怖くて前に出られなかった「ホントは熱い看護師」がやりがいを感じて定着し、次第によい組織になっていくのです。 水風呂スタッフの主張を養護し、変化を起こさないでいると、水風呂スタッフ率はどんどん上昇します。 「でると寒い」と、ぬるい風呂に長く浸かっているとどうなるでしょうか。 確実に風呂の湯の温度は下がり、いつの間にか水風呂になって入っている人の体温が奪われ、冷たくなっていきますね。 組織にも同様のことが起こるのです。 「どうせ言っても変わらない」と、熱き看護師は意見を言うことを諦め、いつしか給料分の仕事しかしない冷たい人になっていきます。 水風呂スタッフのつくった組織風土で生き残るには、自分も冷たくなるしかないからです。 ためにやっていこう」と管理職が組織の温度を上げる(変化を起こす)ことが重要です。 組織の温度を上げる(改善する、アンケートを取る)と熱い看護師は満足(適温に感じる)し、よい組織がつくれます。 さまざまな改善をすると、変化を嫌がる水風呂スタッフは最初のうちは辞めていきます。 しかし、水風呂スタッフが怖くて前に出られなかった「ホントは熱い看護師」がやりがいを感じて定着し、次第によい組織になっていくのです。 水風呂スタッフの主張を養護し、変化を起こさないでいると、水風呂スタッフ率はどんどん上昇します。 「でると寒い」と、ぬるい風呂に長く浸かっているとどうなるでしょうか。 確実に風呂の湯の温度は下がり、いつの間にか水風呂になって入っている人の体温が奪われ、冷たくなっていきますね。 組織にも同様のことが起こるのです。 「どうせ言っても変わらない」と、熱き看護師は意見を言うことを諦め、いつしか給料分の仕事しかしない冷たい人になっていきます。 水風呂スタッフのつくった組織風土で生き残るには、自分も冷たくなるしかないからです。奥山美奈
看護師、高等学校教諭(看護)を経てTNサクセスコーチング(株)を設立。管理者教育から採用プロジェクトチームの指導、人事評価の構築などの組織の課題をまるごと解決するマグネット化支援を行う。現職の管理職を、人を育て組織の経営課題も解決する「院内コーチ」へと昇格させる「コーチ認定制度」は奥山オリジナルプログラム。認定者のその数300名。ソフトテニスで3度の国体出場、2013年度マスターズ全国大会準優勝の経験から提供されるコーチングは圧倒的な成果を産んでいる。書著5冊。連載、講演多数。エルゼピアジャパン「上手な叱られ方」「医療にとって本当に必要な接遇とは何か」e-learning講師。S-QUE「訪問看護」e-learning総合監修。