なぜ部下は反発するのか?本当の理由とは

2025.07.19

こんにちは!
TNサクセスコーチングの奥山美奈です。

夏本番、体力だけでなく人間関係にも“疲れ”が出やすい時期ですね。
今回は、看護の現場でよく相談されるマネジメント上の悩みである
「なぜかいつも上司に反発する部下」との関わり方についてお届けします。

上司にだけ反発する部下、その背景にあるもの

「またあの子が、師長の指示に反発していて…」
「本人は仕事熱心だけど、素直じゃなくて困っている」

そんなケースに、あなたの職場でも心当たりはありませんか?

ある看護師Zさんは、
「なぜか上司にだけ反発してしまう。でも理由はよくわからない」とコーチングに訪れました。

対話を重ねるうちに見えてきたのは、
「理想の上司像」とのギャップによる“認知のゆがみ”でした。

参考)認知のゆがみとは?
「ものの見方・感じ方が偏ってしまった状態」を指します。
言い換えるなら「思い込み」「思考のクセ」。
過去の経験や感情から、物事を一面的に捉えてしまう“こころのメガネ”のようなものです。

たとえば——
「失敗した=自分はダメな人間だ」と決めつける
「部下はこうあるべき」「上司ならこうして当然」などの理想を他人に当てはめる

本人にとっては“正しい”と思っている分、周囲とのズレに気づきにくく、
感情の衝突や人間関係の悪化を引き起こすことがあります。

◆「反発の本音」を掘り下げるコーチングの問い

私はZさんにこう尋ねました。

「反発することで、得られていたものは何ですか?」

すると彼女は語りはじめました:

・自分の意見が通った
・患者の安全が守れた
・病院の評判が上がった
・看護師としての誇りが持てた
・親孝行ができた
・最後には「穏やかでいられるようになった」

反発の奥には、“穏やかに生きたい”という深い願いが隠れていたのです。

◆ 身体に記憶させることで感情に働きかける

Zさんが過去の上司との温かな記憶を語ったとき、
私は彼女の左肩に手を置き、一定のリズムで軽く圧をかけました。

これはアンカーリングという技術で、
過去の“リソースフル(力が満ちた)な状態”を、身体の一部に記憶させるメンタルトレーニングの一種です。

「反発したくなったら、この肩にそっと触れてみてください」

この言葉にZさんは、ほっとした表情でうなずいてくれました。

◆ アンガーマネジメントだけじゃ足りない?

「怒りはコントロールできる」として注目されているアンガーマネジメント
たしかに怒りの感情を言葉にしたり、その場を離れたりすることで、
表面的な衝突を避けることはできます。

でも——
“怒りを抑えること”と“怒りの根っこを整えること”は違います。

怒りや反発の多くは、
・ 過去の体験による防衛反応
・ 理想とのギャップによる失望感
・ 自分の想いが届かないことへの無力感
など、深いレベルの“ゆがみ”からくる反応です。

いくら「感情を抑えよう」としても、
その根っこにある「自分の見方」や「身体の反応」が整っていなければ、
また別の場面で感情があふれてしまうのです。

◆ 感情を整えるにはアンカーリングという選択肢を

アンカーリングは、たとえばこんな場面で活用できます。

・検査・オペ前の緊張
・苦手な相手との会話前
・失敗直後の自己否定感
・上司や部下との感情的な衝突の予感があるとき

「こうあるべき」「わかってもらえない」という怒りが出てくる前に、
身体が安心状態を思い出してくれることで、行動や言葉も変わってきます。

アンカーリングは、単に「怒りをがまんする」のではなく、
“反応しない自分”をつくっていくセルフマネジメントの一歩です。

奥山美奈
奥山美奈
看護師、高等学校教諭(看護)を経てTNサクセスコーチング(株)を設立。管理者教育から採用プロジェクトチームの指導、人事評価の構築などの組織の課題をまるごと解決するマグネット化支援を行う。現職の管理職を、人を育て組織の経営課題も解決する「院内コーチ」へと昇格させる「コーチ認定制度」は奥山オリジナルプログラム。認定者のその数300名。ソフトテニスで3度の国体出場、2013年度マスターズ全国大会準優勝の経験から提供されるコーチングは圧倒的な成果を産んでいる。書著5冊。連載、講演多数。エルゼピアジャパン「上手な叱られ方」「医療にとって本当に必要な接遇とは何か」e-learning講師。S-QUE「訪問看護」e-learning総合監修。
  • facebook
  • instagram
  • youtube