団塊世代はいま75〜79歳|できていますか?高齢者イメージのアップデート

2025.10.21

「団塊の世代はいま何歳?」——この問いに明確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。
1947〜1949年生まれの彼らは、2025年現在で75〜79歳
人口約800万人という“日本史上最大のボリューム世代”であり、医療・介護の中心顧客層でもあります。

彼らは戦後の混乱期を生き抜き、高度経済成長を支えた「仕事人間」の象徴。
一方で、学生運動やフォークソング、ミニスカートといった文化の最前線にもいた“自己主張の世代”です。
そのため、「はい」「わかりました」と従うだけの“おとなしい高齢者”とはまったく異なります。
いま現場にいる看護師や介護職が直面しているのは、
「自分の意見を曲げない」「納得しない」「譲らない」高齢者たちなのです。

「団塊の世代の高齢者は、これまでの高齢者像と大きく違う」

雑誌の特集記事のために、団塊の世代の男女2人と筆者で三者対談をしたときのこと。
「皆さん、『こんな商品やサービスがあったらいいな』と思うものを教えてください」と尋ねると、男性の一人が即答した。

「一日中、俺の蘊蓄を聞いてくれるロボット。しかも、俺が『眼鏡どこやった?』と聞いたら、『洗面所ではないですか』って答えるような“会話ロボット”ね。40万円以下ならすぐ買うよ。」

すると、隣の女性が「そんなロボットが流行ったら、男は家から出てこなくなるじゃない」と詰め寄り、
「男は理由もなく外に出かけないだけだ」と反論。
「女は理由もなく出かけてるって言いたいの!?」と火花を散らし、まさかの大喧嘩に発展。
——まさに「団塊の世代、恐るべし」である。

筆者はこの出来事で実感した。
「団塊の世代」は、謙虚で控えめだった従来の高齢者像とはまったく違う。
自己主張が強く、議論を恐れず、言葉を持ってぶつかる世代だということを。

これまで筆者が接してきた高齢者は、食事を残さず食べようとしたり、
オムツ交換に「ありがとうございます」と頭を下げたりと、謙虚な人が多かった。
そんな姿を見て「年を取ると丸くなるんだな」と思っていた。

だが、団塊の世代は違う。
彼らは学生運動を経験し、ビートルズとミニスカートの時代を生き、“個”として自分の意見を持ってきた人々だ。
その性格は、認知症を発症してもさらに強調されるかもしれない。

穏やかだった「昭和の高齢者」から、「自分の意見を明確に主張する高齢者」への時代へ。
私たちは、そんな変化を受け止める準備ができているだろうか。

高齢者×テクノロジーは、実は相性がいい

「西野カナを歌え!」と言う77歳の男性。
「Facebookに上げていい?」と尋ねる82歳の女性。
——これが今の高齢者のリアルだ。

ある施設では、利用者が「Wi-Fi環境の良さ」を基準に入居を決めるという。
スマホを自在に使いこなす彼らにとって、「高齢=デジタル弱者」という図式は、もはや過去の話だ。

では、団塊の世代が80代を迎える10年後、どうなるだろう。
生成AIで自伝を執筆し、VRで映画を観て、eスポーツを楽しむ。
そんな高齢者が現実になるかもしれない。

国際医療福祉大学・高橋泰教授はこう語る。
「団塊の世代の多くは、自分の人生を自分で決めたい人たち。だから“胃ろうはしない”“痛みながら生きるのは嫌だ”と意思表示をする。ACP(人生会議)が進むことで、重度介護の人口は減っていくだろう。」

団塊の世代は「お騒がせ」ではなく、“社会を変える最後の現役世代”なのかもしれない。

高齢者の進化に、現場はついていけるか

生成AIが認知症患者の会話相手になる時代。
「今日はデイサービスの日ですね」「バッグにタオルは入りましたか?」そんな声かけをAIが行い、認知機能の変化を分析して家族に通知する。

また、食事写真を撮るだけで、足りない栄養素を指摘し、好みに合わせた献立を提案するアプリも開発が進んでいる。

“高齢者×テクノロジー”は、想像以上に親和性が高い。
そして、「自分のニーズを満たす商品がない」と嘆く高齢者の言葉は、医療・介護現場への問いかけでもある。

私たちが今アップデートすべきなのは、「高齢者」そのものではなく、「高齢者をどう見ているか」 という認識のほうかもしれない。

まとめ:変わりゆく高齢者像に、組織はどう応えるか

高齢者対応の難しさは、世代変化の速さにある。
いま現場が向き合っているのは「ケアされる存在」ではなく、「自分で生き方を選びたい人たち」だ。

患者の自己主張の強さに疲弊する職員もいるかもしれない。
しかし、それを「扱いづらい」と片づけてしまえば、組織の成長は止まる。
対応力とは、時代の変化を柔軟に受け止める力でもある。

そして今、あなたの病院スタッフは「熱湯」?「水風呂」?「ぬるま湯」?

現場を混乱させるのは、患者だけではありません。
スタッフ同士の“温度差”も、組織のパフォーマンスを大きく左右します。

  • 熱湯タイプ:理想が高く、燃え尽きやすい
  • 水風呂タイプ:指示された分しか動かない
  • ぬるま湯タイプ:危機感が薄れ、変化を拒む

この「温度差」を感覚でなく、データで把握できるのがぬるま湯診断です。
チームの現状を可視化し、「何を変えるべきか」「どこを支援すべきか」が明確になります。

あなたの職場の“湯加減”は、今どんな状態でしょうか?
「ぬるま湯診断」で、組織の温度とチームの健康状態を見える化してみませんか。

奥山美奈
奥山美奈
看護師、高等学校教諭(看護)を経てTNサクセスコーチング(株)を設立。管理者教育から採用プロジェクトチームの指導、人事評価の構築などの組織の課題をまるごと解決するマグネット化支援を行う。現職の管理職を、人を育て組織の経営課題も解決する「院内コーチ」へと昇格させる「コーチ認定制度」は奥山オリジナルプログラム。認定者のその数300名。ソフトテニスで3度の国体出場、2013年度マスターズ全国大会準優勝の経験から提供されるコーチングは圧倒的な成果を産んでいる。書著5冊。連載、講演多数。エルゼピアジャパン「上手な叱られ方」「医療にとって本当に必要な接遇とは何か」e-learning講師。S-QUE「訪問看護」e-learning総合監修。
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