対策は万全ですか?『ペイシェント・ハラスメント』
2025.11.23
Tiktokで70万回再生! 注目が高まる「ペイハラ対策」と接遇大会
先日、大阪で病院、クリニック、薬局、訪問看護ステーション等で勤務するスタッフの『接遇を競う大会』を行った。
なんと読売テレビの取材と出版社の取材が2件入った。カスタマーハラスメントの法整備に伴い、注目度が高かったのだろう。夕方のニュースで放映された「接遇大会」の様子は、同社のTikTokにアップされ、70万回再生されるに至った。つまり、『バズッた』のだ。これには参加者と関係者一同、びっくり仰天。と同時に、『今まで悩んでいたのは、自分たちだけではなかったのだ』と、あらためてペイシェント・ハラスメントへの対策を取ることの重要性を確信した機会となった。

今回はぜひ、この大会の様子を紹介させてほしい。記念すべき第一回目に出場してくれたのは6チーム。公立甲賀病院(滋賀県)、山陽病院(広島県)、株式会社コネクトケア(和歌山県)、アルカ薬局(兵庫県)、あんようじこどもクリニック(栗東市)、ヴェクソンインターナショナル株式会社(東京)と全国から出場してくれた。「無理難題を押し付けてくる模擬患者に、冷静、かつ、スピーディに対応し、クレームを鎮火させる」そんなゴールを目指し、6チームがロールプレイに臨んだ。模擬患者の多くは元医療介護従事者で、事例の作成は看護師でもある筆者が行ったため、会場はこれまでにない「生々しさと重苦しさ」に包まれた。
【事例1】診断書の書き換えを強要する激しいクレームへの対応
早速、3つの事例をご紹介したい。公立甲賀病院の医事課職員への事例は「生命保険の給付金が低くなるため、一度作成した診断書の診断名を書き換えろ」という激しいクレームであった。

この模擬患者は恥ずかしながら筆者が担当したが、クレームの内容よりも筆者の鬼の形相に翻弄され「実力を十分発揮できずに悔しい」と、対応してくれた青木さん、西さん、三輪さんから言われ、熱が入りすぎたことを反省した。しかし、「来年こそ、優勝を狙います!」と、早々にリベンジ参加の意思を表明してくれてホッとしたのと同時に、なんと頼もしいスタッフなのだろうかと感激した。
【事例2】認知症患者への対応から見る、事務職の「観察力」とタスクシェアの可能性
山陽病院の受付スタッフの事例は「何度も同じ話をくり返し、会話をおわそうとすると怒り出し、特別扱いを要求してくる認知症患者への対応」であった。

親身な対応が目立っていた山陽病院。ロールプレイ後に、筆者が声をかけると、山陽病院の受付スタッフの細川さん、岡本さんは「こういった患者さんいらっしゃるので認知症について勉強したりしています。仕事を早くこなすにはすぐに会話を切ればいいのかもしれないんですけど、この怒りって認知症悪化の症状かも?表情も前より険しくなったきたよね、なんて思うとつい聞き入ってしまって、、、、。」と猛省している。「ん?」これは反省すべきというより、彼女らは「看護業務でいうところの『観察と情報収集とアセスメント』を自然に行っているのだ。これはすごい。事務職という職域を超えて『看護師に求められる業務』ができているのだからこれは「サービス提供の質が高い」と言わざるを得ない。素晴らしいことである。
人手不足が常態化している医療界では、ともすれば彼女のこの「ひと言」はスルーされ、仕事が遅いと評価されてしまうのかもしれない。しかし、コスパ、タイパだけに捉われて「医療サービスの質の低下」を招いてしまっては本末転倒ではないだろうか。職域を超えた仕事や役割以上の仕事を依頼すると「それって私の仕事じゃありません」なんていう職員が多い中、彼女のあり方は、美しいし懐かしい。一方で、専門職不足を補うため、「タスクシェアを推進せよ」という流れ通りに、検査や予防接種についての説明を事務職がするように業務拡大を図ると「医療者以外に説明をさせるな」と反対する者もでてくる。
ナイチンゲールは看護覚え書きという書籍の中で、「すべての女性は看護師である」と綴っている。理由は、子どもや家族の看病や介護を通して女性は『看護』を経験するからだとしている。(多様性が認められる現代は男性も看護師なのだろうが)ナイチンゲールの意見に私も賛成だ。看病、介護、子育てで人を見守っている人は十分、看護ができる。看護師のカリキュラムはたかだか3200時間。看護学校に入学したばかりの1年生はそもそも何の知識もないが、「看護」を学んでそれなりの看護師になっていく。
「診療の補助業務」における予防接種や検査介助の項目を看護学生が使うテキストなどで学習すれば、十分、事務職が説明業務を担当することは可能であると元教員の筆者は断言したい。現に、筆者が教育支援をしている健診センターでは、これらの説明は数をこなしている事務スタッフの方がはるかに専門職より分かりやすい。と、長くなったが今回の大会で事務職の方々のポテンシャルの高さにタスクシェアの可能性を多いに感じた。
長谷川式スケールなどみっちりと学習すれば、病院の窓口で認知症の悪化にいち早く気づけ、適切な診療につなげることができるのではないかと思う。
【事例3】怒りを感謝に変えた「傾聴と提案」の力
アルカ薬局に出されたのは中学生の女子のオーバードーズの事例で、難易度が高すぎないかと審査員一同、心配していたものだった。

「娘が抗不安薬と睡眠薬を大量に服用し、救急搬送された。どうしてくれるんだ。」と父親が怒鳴りこんでくるというところからロールプレイは始まった。
対応してくれたのは薬剤師の白水さん、中原さんという若手スタッフだった。その対応はじつに完璧で会場を感動でうならせてくれた。怒りをあらわにする父親に、彼らは開口一番「娘さんの容体はいかがですか。」というねぎらいの言葉をかけた。
その声かけは、父親の怒りを鎮め、一気に父親の表情が緩んだ。人は一方的に責められると防衛反応が働き、ついつい「言い訳」がましいことを言ってしまうが、彼らは父親の訴えを積極的に傾聴(アクティブリスニング)し、謝り続けた。
そして、タイミングを見計らって有益な情報を真摯な表情で伝えだした。「学校の先生方も心配されていると思いますので、僕たち薬剤師が学校に伺って、お薬についての説明や多く飲んでしまったときの対処や危険性などを説明させて頂けないでしょうか」と提案すると、父親は安堵の表情を浮かべた。薬を一気に飲んでしまうことの危険性について十分説明責任を果たせなかったことを詫びながら、娘さんが「お薬を一気に飲んでしまいたい」という気持ちになるまで追い詰められた何かがあったのだとしたら、これが役に立つかもしれません。と、悩み事を無記名で相談できるアプリケーションを紹介。
さらに思春期の子どもを持つ親が集まれる地域のネットワークを父親向けに紹介すると、最後には「ここまで考えてくださってありがとうございます。」と、父親から感謝の言葉がでた。クレームが職員の対応で感謝に変わった瞬間だった。満場一致で、アルカ薬局は優勝。
クレーマーと断じる前に。「振り返り」が医療サービスの質を高める
「あの人、クレーマーだからね」と、線引きしてしまうと人は「考える」ことをしなくて済む。すると、医療者側の不適切な対応がクレームを引き出していることにも気づかずサービスの質が低下する可能性も高い。
制度や法律で裁くのは簡単だが、「どこからクレームに発展したのかをスタッフ同士で振り返り分析する」という風土を作り、アルカ薬局の彼らのように「医療者側の慈愛で相手を感化することができるような崇高な交流」を目指すと言う方が、日本の医療現場にはふさわしいのではないかと今回の大会を通して筆者はそう思った。
そして今、あなたの病院スタッフは「熱湯」?「水風呂」?「ぬるま湯」?
現場を混乱させるのは、患者だけではありません。
スタッフ同士の“温度差”も、組織のパフォーマンスを大きく左右します。
・熱湯タイプ:理想が高く、燃え尽きやすい
・水風呂タイプ:指示された分しか動かない
・ぬるま湯タイプ:危機感が薄れ、変化を拒む
この「温度差」を感覚でなく、データで把握できるのがぬるま湯診断です。
チームの現状を可視化し、「何を変えるべきか」「どこを支援すべきか」が明確になります。
あなたの職場の“湯加減”は、今どんな状態でしょうか?
「ぬるま湯診断」で、組織の温度とチームの健康状態を見える化してみませんか。





